ロジカルシンキング研修

論理的思考の基礎を学ぶ

ロジカルシンキングとは

ロジカルシンキングとは、一貫していて筋が通っている考え方、あるいは説明の仕方のことで、論理思考あるいは論理的思考と日本語訳されます。物事を論理的に捉えながら話すことにより、聞き手にもわかりやすく伝えることができます。問題解決の際にも原因特定や解決策の立案に効果的な思考プロセスです。会議や打ち合わせで、「で、何が言いたいの?」「もう少し整理して話して」などと、思うことがありますが、これは、ロジカルシンキングが出来ていない典型的な事例と言えます。ロジカルシンキングは、ビジネスの様々な場面で役立つことから、ビジネスパーソン全員が身に付けるべきスキルといえます。

 

研修の狙い

  • ロジカルシンキングの基礎を学び、自ら論理的に考える習慣をつける
  • 様々なロジカルシンキングのフレームワークを演習を通して体感する
  • 論理的思考をベースに、相手の納得感を高め、わかりやすく伝える話し方を身につける

プログラム

※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00です。

1.論理的な人と非論理的な人【グループワーク】

(1)論理的に考えるとは?
(2)論理的な人の特徴と論理的で無い人の特徴

2.ロジカルシンキングの基本「帰納法と演繹法」

(1)三角ロジックで考える
(2)帰納法とは
(3)演繹法とは

3.モレやダブリを無くすMECEという考え方【グループワーク】

(1)MECEとは何か
(2)全体を俯瞰して物事を考える
(3)MECEは切り口が大切

4.フレームワークの基礎【グループワーク】

(1)フレームワークはどのように使うのか
(2)マトリックス型フレームワーク(SWOT等)
(3)ライフスタイル型フレームワーク(バリューチェーン・PLC等)
(4)キーワード型フレームワーク(3C、4P、5forceなど)

5.ロジックツリーを知る【グループワーク】

(1)ロジックツリーはどのように使うのか
(2)Whyツリー:結果に対して原因を考える思考
(3)Howツリー:目的に対して手段を考える思考

6.ピラミッドストラクチャーを知る【グループワーク】

(1)ピラミッドストラクチャーはどのように使うのか
(2)具体的な事柄から何が言えるか
(3)主張を明確にする
(4)So What? とWhy So? で論理の流れを確認する

7.論理的で説得力のある話し方

(1)情報を整理し、端的でわかりやすい説明手法
(2)ロジカルプレゼンテーション

8.まとめ

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い

ロジカルシンキングに類似した言葉に、クリティカルシンキングがあります。クリティカルシンキングもロジカルシンキングと同様、ビジネスにおいて役立つ思考法の一つです。

日本語では、「批判的思考」と訳され、あらゆる物事の問題を特定して、適切に分析することによって最適解に辿り着くための思考方法のことです。ここでいう「批判」は、「その考え方はおかしい」「その理論は間違っている」と主観的に批判するのではなく、「自分に都合の良い論理になっていないか?」「このデータの信憑性に問題はないか?」といった問いを投げかける思考のことを指します。また、他者に対してだけでなく、自身の論理構成や内容について内省することも意味しています。 

ロジカルシンキングを行い、一貫していて筋が通っていても、そもそも考える前提や情報が間違っている場合、結論は、当然間違ったものになってしまいますので、ロジカルシンキングとの関係性でいえば、補完的な関係にあると言えます。又、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの両方を行うことで、初めて、「物事を正しい方法で正しいレベルまで考える」ことが出来るともいえます。

 

ロジカルシンキングを身に付けるメリット

研修を通じてロジカルシンキングを身に付けることで次のようなメリットが期待できます。

⑴ 分析能力の向上
ビジネスシーンでは、たくさんの情報を持っていても、活用できなければ意味がありません。ロジカルシンキングは、さまざまな情報を分類して、それらの間にどのような相関関係・因果関係があるのかを整理し、その上で結論を導き出すことができます。ロジカルシンキングを身に付けることで、潜在的なニーズや隠れている課題などに対する分析能力が向上することで、情報の有効活用が見込めます。

⑵ 問題解決能力の向上
ロジカルシンキングは、物事を「洩れなく」「順序立てて」「矛盾がないように」考える思考法です。ロジカルシンキングを行うことで、問題の原因を正しく捉え、解決に必要な情報や作業を導き出せるようになり、解決への道筋が立て易くなることから、結果としてスピード感を持った課題解決が実現できるようになります。

⑶ コミュニケーション力の向上
ロジカルシンキングを身に付けることで、論理的な思考が身につくだけではなく、自分の意見や考えを分かりやすく、かつ正確に伝えられるようになります。又、ロジカルシンキングを意識した意見や説明は、事実や根拠と主張が明確になっていることから、聴き手にとって分かりやすく説得力が増します。

⑷ 理解力が高まる
ビジネスでは、相手の真意を読み解く理解力が必要です。ロジカルシンキングでは、問題を分類して因果関係を解明しますが、これは人の意見に対しても利用することが出来ます。相手の意見の要素分けを行うことで、因果関係を追うことができるため、「発言の意図」や「発言の根拠」などを考えられるようになります。又、相手の発言の根拠などに不明な点がある場合も正確に把握でき、その不足部分を適切な質問を行い補うことで、更に理解を深めることが可能となります。

⑸ 主体的に考える力が身につく
ロジカルシンキングでは、物事に対して「なぜそうなるのか」「もしこうなったら、結果はどうなるのか」というように、深く物事を考える癖がつくようになります。
「今、自分が何をすべきか」「この仕事の必要性は何か」などを、日頃から物事の本質を捉え、必要な行動を考えられるようになることで、指示待ち人間にならずに主体的に行動できるようになります。

⑹ 生産性の向上
ロジカルシンキングでは、業務を遂行するための道筋を論理的に考えられるため、不必要なプロセスをしっかりと把握できるようになり、無駄な手順や作業を省くことができ、生産性を高めることが可能となります。

それでは、ロジカルシンキングの基本のフレームワーク(考え方)について、見ていきましょう。

 

演繹法と帰納法

論理的に物事を考える場合、私たちは無意識のうちに演繹法と帰納法という2つのアプローチを用いています。なじみのある言葉ですが、これらをきちんと理解しておくことが、ロジカルシンキングを行う上で非常に重要です。

⑴ 帰納法

帰納法は ①データ(事実)から傾向や法則を読み取り、②論拠(理由)を基に仮説・推論して ③主張を導きだす論理法です。

例えば社内で、AさんとBさんとCさんが高い評価を受けていたとします。3人はいずれも、海外経験を有しています。すると、そこから帰納法的に考えれば、

① データ  Aさん・Bさん・Cさん共に高い評価を受けている
② 論拠   3人とも海外経験がある
③ 主張  「我が社で高い評価を得るためには海外勤務が必要である」
という一つの仮説が導き出されます。

⑵ 演繹法

演繹法(えんえきほう)は一般論となる ①論拠(ルール)と観察事項となる ②データ(事実)を結びつけてそこから ③主張を導き出す論理法です。

先ほど取り上げた「我が社で高い評価を得るためには海外勤務が必要である」という論拠(ルール)に対して、「私は海外赴任を経験していない」という事象を組み合わせると、「私は高い評価は得られない」との結論に達します。このように演繹法では、あるルールに事象をあてはめることで、おのずと結論が導き出されてくるのです。

新たなチャレンジを必要とする現在のビジネス環境においては、目の前で起きている事象から新しいルールを見つけ出すという帰納法的考え方が重要視される場合が多く見受けられます。演繹法的な思考に必要な知識をしっかり身につけるのと同時に、目の前の事象から何らかの解釈を導き出していく帰納法的な思考を鍛えることを反復しながら、素早い意思決定ができるように、日々トレーニングすることが大切です。

三角ロジック

「三角ロジック」は、イギリスの哲学者であるスティーヴン・トゥールミンが示した論証のパターンの枠組みでもっとも基本的な形です。
普段意識することなく行っている思考方法ですが、論理的思考の基礎となる考え方であり自説を確認したいときや、相手の論理に疑問を感じたときなどには活用できるフレームワークです。

⑴ 論証の方法
トゥールミンは、ある主張(claim)を論証するためには、それを支えるデータ(data)と、データが主張につながるためのロジックであるワラント(warrant)が必要であるとしました。ワラントは日本語訳されて「論拠」と呼ばれることもあります。

例えば、「商品Aの売り上げを増加させるために広告を増加させるべきだ」という主張を論証するためには、まず「売上が年間10億円から5億円低下した」というデータを持ってきます。これは事実ですので、論証する必要はありません。しかし、「売上が5億円低下した」というデータが、「広告費を増加させた方がいい」という主張に直接つながるかというとそうではありません。

以前に同様の事態の際に、広告費を増加させたことで売上が上がった成功経験をしている場合、「売上が低下した」と言われれば、すぐに「広告費を増加させた方がいい」というかもしれません。以前の成功体験に基づく対応が、いつまでも効果があればいいのですが、変化の激しい現代では、もう少し冷静に議論をする必要があります。

顧客のニーズの変化や往訪等による営業力の低下や競合商品の値下げ、代替品の登場等、売上が低下している原因が変化している可能性もあります。あなたが、広告費の増加に賛成できない場合、どのよう対応をしていけばよいでしょうか。トゥールミンの三角ロジックを使って考えていきましょう。

⑵ 暗黙のロジック
この議論には、次のような議論の表面には出ていない「暗黙のロジック」が間に挟まっています。

「売上が5億円低下した」             データ

「5億円の低下は問題だ」           暗黙のロジック1

「広告費を増やせば売上が上がる」      暗黙のロジック2

「売上が上がると問題が解決する」      暗黙のロジック3

「問題は解決しなければならない」      暗黙のロジック4

だから「広告を増やした方がいい」      主張

⑶ 反対する方法
反対する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。反対の方法は、反駁、質疑、反論の3種類があります。以下に詳しく見ていきます。

❶反駁(Rebuttal)
反駁(はんばく)とは、相手の意見や批判に対して、反対する根拠や問題点などを持ち出して、論じ返すことです。
「いや、広告費は増加しない方がいい」と単に主張に対して反対しても、反対するだけの理由をきちんと述べていなければ、堂々巡りとなるだけで反駁とはなりません。例えば、「広告費を増やせば売上が上がる」というワラントに対して、「もし商品力が低下しているならば広告費を増やしても売上は上がらない」というワラントを出せば反駁になります。また、例えば、「売上が5億円低下した」にしても、「未契約ながら、既に確約している売り上げが、5億円以上ある」のであれば反駁となります。つまり、主張を支えている「データ」または「ワラント」に反対することが反駁です。

❷質疑(Question)
反対の方法の2番目は質疑です。質疑は、三角ロジックの「データ」または「ワラント」そのものに疑問を提示することです。議論においては、データとギャップについて、確認を行うことが重要です。たとえば、「売上が5億円低下した」というデータに対して、「なぜ5億円低下したと言えるのか?」「5億円低下したことは問題といえるのか?」という質疑を出します。または、「広告費を増やせば売上が上がる」というワラントに対して、「なぜ広告費を増やせば売上が上がるのか?」という質疑を出します。質疑を受け主張側は、データやワラントの根拠を提示することで回答します。これによって、議論はさらに、明確に深まっていきます。

❸反論(Counter argument)
反対の方法の3番目は反論です。反論は、主張側の三角ロジックとは別の新しい三角ロジックを立てることによって、相手側の主張が不適切であることを示していきます。例えば、反論の例として、「売上が5億円下がった」(データ)→「広告費を削って、営業人員を増やす方が売上は上がる」(ワラント)→「広告費を減らした方がいい」(主張)という三角ロジックを立てます。ここでは、「売上が5億円下がった」というデータは、主張側のものをそのまま使っていますが、ワラントを新たに立てることで正反対の主張を組み立てています。このように反論によって、相手には新しく立てられた三角ロジックに反対する義務が生じます。この義務が果たせなければ自分の主張を取下げなければなりません。

MECE

MECEは「モレなく、ダブりなく」と訳し、Mutually(お互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れがない)の頭文字を取った用語です。
問題解決を行う場合、課題が大きくて複雑であればあるほど対応策を考えることが難しくなります。そのような場合、課題を論理的に小さく、よりシンプルな形に場合分けする必要が出てきます。その際、検討に必要な要素を網羅しながらも、それらが重複しないようにする考え方も同時に必要となります。そこで登場するのが、「MECE」の考え方です。

次に、MECEに考えていくためのフレームワークを紹介します。

ロジックツリー

ロジックツリーとは直訳すると論理の木で、問題をツリー状に分解し、その原因や解決策を論理的に探すためのフレームワークです。
足し算型・掛け算型のいずれにせよ、その階層における足し算や掛け算の結果を一段上の階層のものとほぼ一致させることで、MECEとなります。

❶足し算ロジックツリー

❷掛け算ロジックツリー

次に、ロジックツリーの作り方には、目的に応じて、大きく3つのタイプがありますので見ていきます。

❶What型:要素分解ツリー
要素分解ツリーとは、その名の通り物事の要素をどんどん分解していって、何が起こっているのかを細かく見ていき、現状のどこに問題点があるのかを把握します。上の足し算型ロジックツリーで、首都圏の売上に問題があることがわかりました。

❷Why型:原因追求ツリー
原因追求ツリーとは、ある問題に対して原因を列挙し、根本原因が何なのかを突き止めるという使い方です。この例では、首都圏の売上に問題があり、売上の内容をさらに調べていきます。上の掛け算型ロジックツリーで、首都圏の売上の問題点は、購買客数を構成する購買率が最近は低下していることが根本原因であることが分かりました。

❸How型:問題解決ツリー(イシューツリー)
問題解決ツリーは、解決したい問題に対して改善策を挙げていく使い方です。最初に問題を取り上げるという意味では、原因追求ツリーと似ていますが、こちらはより今後のアクションに直結している活用方法です。

例えば、商品構成や価格は、競合店対比見劣りはないものの、チラシは他社がカラー刷りであるのに対し、2色刷りでインパクトに欠けることが分かった場合は、チラシの改善に注力していく方針を立てます。

ピラミッド・ストラクチャー

ピラミッド・ストラクチャーは、伝えたい「結論」と「その根拠」をピラミッド状に図式化するフレームワークです。ピラミッド・ストラクチャーを意識した発言や文書は、聞き手や読み手が理解しやすくなる効果があります。これは、ある結論が「論理的に正しい」ことを説明するため、根拠を箇条的にいくつも並べるより、結論を頂点として複数の根拠を、下部に配置したピラミッド構造にした方が、理解がしやすくなるためです。

それでは具体的に、見ていきましょう。

❶ピラミッド・ストラクチャーを利用しないケース

このように、整理されていない箇条書き状態では、「EV自動車産業に参入すべき」と主張されても、主張している根拠は何かを直ちに理解するのは難しくなります。

❷ピラミッド・ストラクチャーを利用したケース
論理をピラミッド型に構造化すると、この図のように主張が整理され、理解しやすくなります。

ピラミッド・ストラクチャーの作業手順
それでは、ピラミッド・ストラクチャーを作る作業手順をご説明します。

❶作成ステップ1.論点を明確にし、論点に対する主張を決める
まずはじめに、何を考え論じるべきなのかという論点を明確にしたうえで、論点に対するピラミッド・ストラクチャーの頂点となる答え(自分の主張)を決める必要があります。この例では、「EV自動車事業に参入すべきか」という論点に対して、「参入すべき」という主張をしています。もし論点が、「我が社が攻めるべき今後の有望な市場を探る」ということであった場合は、「EV自動車事業に参入すべき」では求められている論点に応えていることにはなりません。ピラミッド・ストラクチャーを作るには、何が課題(論点)かをしっかり押さえ続けて、その課題に対してダイレクトに答える主張を用意する必要があります。

❷作成ステップ2.論理の枠組み(フレームワーク)を考える
主張が決まったら、主張するために、どのようなことが言えればいいのか?というフレームワークを考えます。このフレームワークは、MECEであることを意識する必要がありますが、厳密にMECEでなくてもよく、聞き手や読み手に納得感があるかが重要です。この例では、事業環境を分析するフレームワークである『3C(市場・競合・自社)』を参考に、関係する情報を整理しています。

❸作成ステップ3.情報をグルーピングしメッセージを抽出する
フレームワークを決めたら、数ある情報をグルーピングした上で、情報から言えるメッセージを抽出します。メッセージの抽出の際には、演繹法や帰納法を利用し、結論を言うために価値ある解釈をしたメッセージを導き出すことが重要です。

❹作成ステップ4.抽出したメッセージで論理が成立しているか確認する
メッセージが抽出できたら、今度は逆に情報がメッセージの根拠になっているかを確認します。

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