評価者研修

管理者として人事評価の重要性を理解し、人事評価に関する手法を学ぶ

評価者研修とは

評価者研修とは、管理職など部下の人事評価を行う評価者に向けた研修です。評価する立場の人が、人事評価制度の仕組みや評価基準、評価方法などに理解を深め、評価スキルを向上させることを目的に行います。評価者研修では評価の基本となる目標の設定の方法や、目標達成に向けた過程での面接指導などの管理プロセスも研修対象とすることがあります。人事制度には、納得性・公平性・透明性が必要です。誰しも、自分自身が納得できる目標に対して努力し、その努力の過程と結果である成果に対する評価は、透明性のある基準で、公平に評価してもらいたいものです。つまり、評価者研修は、人事制度を効果的に運用するために必要な研修であると言えます。

 

研修の狙い

  • 人事評価の重要性・基礎知識を理解し、評価を人材育成に活用する意識を高める
  • 自社の評価表を使ったケーススタディを通じて、実際の人事評価に活用する
  • 部下との信頼関係を構築する面談の進め方のポイントを学ぶ

プログラム

※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00です。

1.人事評価の重要性を認識する

(1)人事評価は管理者の役割のひとつ
(2)人事評価を活用してマネジメントする
(3)人事評価は部下とのコミュニケーションツール
(4)人事評価は査定をするのではなく育成に活用する

2.自社の人事制度の仕組みを理解する

(1)基本的な人事制度の機能
 ➀評価
 ➁処遇
 ➂育成
(2)自社の人事制度のポイントを知る

3.目標管理の基本と目的を理解する

(1)目標管理の基本と目的の認識
(2)目標設定時の留意点
(3)目標管理の運用ポイント

4.自社の評価表を使ったケーススタディによる事例研究【ワーク】

(1)ケーススタディによる個人評価
(2)メンバーの様々な評価の共有【ディスカッション】
(3)講師フィードバック
 *ケーススタディは、貴社のイメージに応じ、DVD/ビデオまたは紙ベースになります。

5.面談のポイント

(1)面談の重要性
(2)面談するときの心構え
(3)面談の進め方
 ➀話を聴く
 ➁話す量と聴く量
 ➂良い面談パターン
 ➃悪い面談パターン
(4)面談の実践【ペアワーク】

6.まとめ

人事制度とは

人事制度とは、経営理念に基づき、人事管理を計画的かつ全体として一貫性をもって行うための基準や運営の仕組みのことです。人事制度は、人材の採用から昇進、賃金、教育、福利厚生などの待遇に至るまで、人材に関するすべての方面に関する制度ですが、主要な人事制度として「等級制度」「評価制度」「報酬制度」が挙げられます。

・等級制度…従業員の職務内容や責任、経験などを考慮して、従業員を級別化する。
・評価制度…従業員の仕事振りや成果を評価し、育成・処遇・配置に利用する。
・報酬制度…期待レベルに応じた基本給と、組織業績と個人成績に応じた賞与で構成される。

図でお示しした通り、評価制度は、等級制度にも報酬制度にも深く関係しており、非常に重要であることがお分かりいただけると思います。

 

評価面談

評価者は、年に数度、被評価者と「評価面談」の機会を設けることになります。評価者研修によって、評価面談を効果的に行うことが出来るようになれば、組織全体のパフォーマンスと被評価者のモチベーションを向上させることができます。一般的な評価面談の年間の流れをご説明します。

「評価のフィードバック面談」は、前年度の実績等により「評価決定」された評価に関するフィードバックを行い、評価の納得性を向上させ、次期の課題を明確にすることを目的に実施します。そのため、最終的な人事評価が確定してから、社員に伝える必要があります。
次に、組織目標を被評価者に説明・共有した上で、「目標設定面談」の中で、被評価者に定量・定性両面の役割期待を伝え、すり合わせの上、目標に関する合意形成を行います。「中間フォロー面談」では、期初に立てた目標の進捗等について、評価者として課題視している点や被評価者が進捗状況についてどう考えているかなどを確認し、サポート体制や必要があれば、目標の修正等を行います。「期末面談」においては、部下から目標に対する自己評価を提出してもらい、プロセスについてもヒアリングした上で、評価者としての人事評価を行います。
評価面談のプロセスで大切なことは、面談の結果を社員の能力開発に結びつけ、評価やフィードバックにより、社員のモチベーション向上を図ることです。そのためにも、評価者は常日頃から、被評価者との信頼関係を築き、社員に関心を持ち、社員のことを良く知ることが必要です。この積み重ねが面談制度を効率的に機能させるカギとなります。

 

評価者研修を行う目的・メリット

それでは、評価者研修の実施によって期待できるメリットについて代表的なものを4つ挙げておきます。

(1)正しく公平な人事評価能力が身につく
人事制度の運用に当たっては、公平性・納得性・透明性が必要ですが、人事評価においては、評価者によって、後ほどご説明する様々な「人事評価エラー」が起きやすく、公平性や納得性が阻害されることがあります。特に人事評価は、報酬や等級の決定などにも影響を与えるため、正しい評価を行うことが人事制度を支える基礎となります。評価者研修には、評価の重要性を理解し、評価基準や評価方法についての学ぶことで、個々の評価者の評価スキルを高める効果があります。

(2)フィードバックスキルを高める
面談で行われるフィードバックは、被評価者の成長やモチベーションの向上ために重要な要素です。
評価者研修では、フィードバックを効果的に行うために、コミュニケーションスキルやコーチングスキルについても学習することが一般的です。たとえ正しい人事評価が出来ていたとしても、本人の成長やモチベーションの向上につながる伝え方をしなければ、被評価者が納得しない可能性があります。これでは、成長を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させることが出来ないばかりか、モチベーションを悪化させることになりかねません。

(3)組織の目標を達成しやすくなる
評価者研修では、被評価者の能力やモチベーションを最大限に引き出し、組織の目標達成に貢献させるよう、個人の目標を定量・定性の両面で適正に設定する方法を学びます。そのためには、はじめに、「経営理念や方針の浸透・推進」を図ることが必要です。その次に、「組織としての方針や推進方法」を伝え、一人ひとりの能力・スキルを考慮した役割期待を伝え、本人とすり合わせを行い、目標を設定します。被評価者にとって、納得感のある目標であり、目標達成により経営理念の達成や組織に貢献できる要素を評価項目に織り込むことで、目標に対するモチベーションが向上し、結果として業績向上を実現しやすくなります。

(4)人材育成につながる
評価者研修によって学んだ、コーチングスキルにより、被評価者の主体性・自主性を高めることが可能です。コーチングは目標達成に必要な方法や問題の解決策を教えるのではなく、本人に気づかせるスタイルの指導法であるため、被評価者に「自分で考えて行動する」という自律性が身についていきます。

 

評価面談で起きやすい人事評価エラー

人事面談においては、評価者の価値観・思考・感情などの影響により、評価を歪めることが生じます。こうした不適切な評価を行う原因を「人事評価エラー」といい、以下の8つが代表的なものとして挙げられます。評価者研修では、人事評価エラーへの理解を進め、自身が陥りやすいエラーへの対策を行うことが必要です。

(1)中心化傾向・極端化傾向
中心化傾向とは、被評価者との人間関係への配慮や、被評価者からの反発を避けるために、当たり障りのない無難な評価をしてしまうことで、全体的にばらつきがなく、5段階評価の場合に3に評価が集中してしまうことです。一方、極端化傾向は中心化傾向の反対に、評価差をつけなければならないという意識で評価をつけてしまう傾向です。5段階評価では、5や1の数値を付けることも多くなります。

(2)寛大化傾向・厳格化傾向
寛大化傾向とは、部下からの反発を恐れる場合や部下の仕事振りを把握できていない場合に起こりがちで、全体的に甘い評価を付けてしまうことです。一方、厳格化傾向は寛大化傾向の反対に、部下の悪い面ばかりに注目をしたり、自分自身が優秀で基準が高くなっていたりする場合に発生しがちです。

(3)ハロー効果
被評価者が持つ目立った特徴に引きずられ、他の評価が歪められることを「ハロー効果」と言います。例えば、営業成績が良いと、後輩指導もしっかりしているはずだという印象で実際の成果などの事実とは関係なく評価を行ってしまうことです。

(4)逆算化傾向
逆算化傾向とは、総合的な評価結果を先に決め、個々の項目の評価を逆算的に決定することで生じるエラーです。具体的には、最終結果となる昇給・昇格・賞与などの評価を先に決めて、各項目の評価を後付けで帳尻合わせして評価する方法を指します。

(5)論理誤差
事実を確認せず、評価者の推論に基づいて評価を下すことを「論理誤差」と言います。例えば被評価者の出身大学や所属団体から、職務遂行能力の高低を判断し評価に反映させるケースが挙げられます。

(6)対比誤差
対比誤差とは、評価者自身の能力を基準にし、被評価者の能力を比較して評価することです。
評価者がIT技術に精通していれば、標準的なIT技術を低く評価することや、逆にIT技術が苦手であれば、少しできるだけでも高く評価をしてしまうケースです。

(7)期末誤差
期末誤差とは、評価期間後半の強く印象に残った出来事が、評価全体に影響してしまうエラーです。このようなエラーを発生させる評価者の下では、評価の基準となる時期にのみに努力する被評価者が増えてしまうなどのデメリットが生じる可能性があります。

(8)親近効果
親近効果とは、共通の特徴を持つ人に対して評価が甘くなる人事評価エラーです。出身大学が同じであったり、共通点があることによって被評価者に対する親近感が生じ、その影響で評価が偏る傾向があります。また、部下とプライベートで付き合いがある場合にも同様のエラーが発生しやすくなります。

 

人事評価エラーが生じることで、人事評価への信頼性が失われ、社員のモチベーション低下を招く恐れがあります。評価者研修により、人事評価エラーについて事前に把握し、エラーに陥らないよう自身の評価方法を随時見直す必要があります。

 

ビジネスセミナーを探す


経営者層から若手層までを網羅した体系 的なラインアップ。経験豊富な講師によ り、年間1,000本以上開催しています。