インバスケット研修

実際のビジネスシーンで起こりうる様々な案件を一定時間で処理する演習を通して、組織としての優先順位付けと問題解決力・ヒューマンスキル・組織活用力等、業務遂行(マネジメント)能力の向上を図る

インバスケットとは

インバスケットとは、まだ決裁がされていない書類が入った「未処理箱」のことです。
「未処理箱」に馴染みのない方は、未開封のメールがたくさん入ったメールトレイを想像していただいてもいいでしょう。もともと、「インバスケット」は、1950年代にアメリカ空軍によって開発されたシミュレーションゲームです。

主人公の立場になって、不測の事態を仮定し、与えられた時間内で的確に高い精度で目標達成をすることが求められます。この訓練を行うことで、人命救助や敵の襲撃といった非常事態などの際に、自分の頭で迅速かつ的確に行動する力を身につけることができます。

 

インバスケット研修とは

インバスケット研修は、一般的には、架空の会社の人物になりきり、制限時間内に数多く、正しく処理することを目標とするワークのことで、管理職研修や、管理職を目指す中堅社員層への研修で行われています。インバスケット研修では、複数の案件を制限時間内に効率よく対応できるかを体験してもらい、自身の対応スキルの現状と改善点を洗い出します。具体的には、60分で20案件ほどの処理をしてもらい、どのように判断し、誰に指示を出すのかなどの回答をしてもらいます。研修を通して、対応や判断時に押さえておくべきポイントを学び、短い時間でも適切な対応ができるようスキルを高めます。
つまり、判断の結果よりも、判断や対応に至るまでの経緯(プロセス)のどの部分を改善すれば良いのか、改善につなげる糸口を見つけることが研修の大きな目的です。

研修の狙い

  • ビジネスにおけるストレスや、様々な制約のあるインバスケットの案件処理を行うことで自身の業務における『思考・行動の癖』を認識し改善を図る
  • 研修にて「優先順位設定」「案件処理」のグループワークを行い、受講者同士の考え方の違いを認識すると同時に、組織としての判断・行動のあるべき姿の目線合わせを行う
  • 複数案件に対する対策の検討→選択→組織を活用した課題解決→目標達成というプロセスの棚卸しを行い、業務遂行(マネジメント)能力を総合的に向上する

プログラム

※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00です。

1.インバスケットを理解する

(1)インバスケットとは
(2)インバスケットで得られる効果
(3)インバスケットはプロセス重視

2.インバスケット演習 【インバスケットツール個人ワーク】

(1)インバスケットツールの説明
(2)案件の処理
(3)問題への対応、優先順位を決める

3.組織としての優先順位設定

(1)優先順位の考え方
 ①優先順位決定の基本
 ②優先順位のマトリックス
(2)あるべき優先順位を明確化する【グループワーク】
 ①各グループでの優先順位設定の意見共有
 ②グループでの案件優先順位を明確化
 ③案件優先順位の発表

4.組織としての問題解決

(1)問題解決の考え方
 ①問題とは
 ②問題の分析
 ③問題の本質
 ④問題解決のステップ
(2)問題解決策の検討【グループワーク】
 ①各グループでの問題解決法の意見共有
 ②グループでの案件の問題解決法を明確化
 ③案件の問題解決法の発表
 ④講師フィードバック

5.案件処理の振り返り【個人ワーク】

6.まとめ

インバスケット研修の特徴とは

インバスケット研修は、一般に行われる座学形式の研修と比較して、いくつかの特徴がありますのでご説明します。

(1)受け身の研修にならない
インバスケット研修は、受講者それぞれが役割を与えられ、自発的に考える演習形式の研修です。又、短時間に処理しなければならないため、インバスケット研修の受講者の集中力やモチベーションが高く保たれます。そのため、一方的に講師の講義を聴くだけの研修とは異なり、主体的に研修に参加する意識を強く持つことができ、高い研修効果が期待できます。

(2)自身の思考の癖を把握し、客観的に評価できる。
インバスケット研修においては、講師からのフィードバックや他の研修参加者との意見交換などにより、自分の思考の癖や改善すべき箇所を客観的に把握し、自身の強み弱みを認識できます。インバスケットの処理のフレームワークを学ぶとともに、他の受講者の思考プロセスや判断も参考にできるため、選択肢や行動の幅が広がることにもつながるでしょう。

(3)人事評価(アセスメント)に利用できる
インバスケットでは、次位職に上がった際にどのように行動するかをシミュレーションすることができ、回答から適性評価を行うことができます。アセスメントとして活用する場面としては、管理職登用時の昇格試験があり、「タスク処理の優先順位のつけ方」や「問題発見能力」「問題解決能力」「対人関係構築力」等を評価し管理職としての適性を確認します。
但し、インバスケットをはじめとした人材アセスメントの演習全般に言えることですが、1回目よりも2回目の方ができたと言う人が多くなります。又、対策本や対策セミナーも存在しますので、これだけに頼った評価は行わず、参考に留めるべきであると言えます。

 

インバスケット思考とは

インバスケット思考とは、多数のタスクを与えられた時間内に的確に、高い精度でこなすための思考法です。明確な定義はありませんが、「優先順位の決定」「期限を意識したタイムスケジューリング」「問題発見と問題解決」「分担を決め効果的に組織を動かす」「リスクマネジメント」などを行う時に活用する思考法やフレームワークの総和と言えます。

具体的な思考法
ロジカルシンキング・ラテラルシンキング・クリティカルシンキング・イシュー思考・
仮説思考など

フレームワーク
アイゼンハワーマトリクス(重要度/緊急度マトリクス)・ロジックツリー・MECE・バリューチェーン・特性要因図・親和図法・プロコン表など

インバスケット思考で最も重要と言えるのが、「優先順位の決定」に用いるアイゼンハワーマトリクス(重要度/緊急度マトリクス)についての考え方ですので、後ほど詳しく解説します。

 

インバスケット研修を行う際の留意点

インバスケット研修においては、主体的な判断力やマネジメント力を最大限身につけてもらうために、守るべき3つのルールがありますので、ご説明します。

(1)当事者意識を持つ
インバスケット思考では、当事者意識を持つことが大切です。つまり、架空の人物になりきるということが必要です。
例題で与えられる役職や部署は、経営者・管理職・人事・営業など、今の立場と違うこともあるかもしれません。しかし、そういった中でも、できるだけそういった立場にあることを想像し、現実的なシチュエーションを設定し、解決策を探ります。また、このインバスケットには絶対的な正解はありません。自分の頭で考え、制限時間内でより最善と思う解答を作ることが求められます。

(2)優先順位をつける
インバスケットには、受講者を悩ませる優先順位の異なる又は同列の事態が混在しており、これらを適切に迅速に処理することが求められます。次の設問を考えてください。

【例】以下のような案件が同時に重なった場合はあなたならどのように処理を進めますか?

①新規案件の見積もりの依頼の確認
②顧客からの苦情の連絡対応
③数時間後に迫った商談書類の最終確認

【インバスケット思考を用いた処理方法】
まず、優先順位を分ける必要があります。インバスケット思考で優先順位を分ける場合は、緊急性と重要性のバランスで考えます。
緊急性が高く重要なのは「顧客からの苦情の連絡対応」です。まず顧客対応が先、次に書類の最終確認、最後は新規案件として処理をすることが重要です。

アイゼンパワーマトリクス(緊急度/重要度マトリクス)
下の図は、「アイゼンハワーマトリクス」や「緊急度/重要度マトリクス」と呼ばれ、仕事の優先順位付けや仕事量の管理、タイムマネジメントで定番的に活用される考え方です。

「重要かつ緊急」なタスクは真っ先にとりかかるべきです。問題は「重要ではないが緊急」と「重要だけど緊急でない」の二つのどちらを優先するかです。多くの場合、「重要ではないが緊急」なものを優先しがちです。しかし、「重要だけど緊急でない」は、問題の根本的な解決につながり、結果として「重要かつ緊急」の事前対処ともなっていくのです。ビジネスで継続的に大きな成果を得ている人は、「重要だけど緊急でない」ものに対する活動を重視していると考えてよいでしょう。できるだけ、「重要ではないが緊急」のものは、他の人に任せるなどして、「重要だけど緊急でない」ものに対応する時間を捻出しましょう。

(3)100点の正解は求めない
インバスケット思考を上手く進めるコツは、100点満点の正解を求めないことです。緊急度と重要度が均衡した業務が発生することも考えられるからです。このような場合は、顧客に満足してもらうことを考えるより、どうすれば苦情につながらないか、不測の事態がさらなるトラブルを引き起こさないようにすることが大切です。

 

インバスケット研修のメリット

インバスケット研修の代表的なメリットを4点挙げてみます。

(1)優先順位設定力の向上
インバスケットには複数のタスクや案件が課題として設定されています。短い時間で課題を処理するために、どのような順番でスピーディに優先順位を判断するかを身に付けることができます。

(2)問題解決力の向上
インバスケット思考を身に付けることで、目の前で起きている問題の対処だけではなく、問題の全体の流れや複数の案件との関連性など顕在的な原因や潜在的な原因を見つけ、解決していく能力が向上します。又、同じことが起きないよう再発防止的な解決も、問題解決のプロセスを繰り返していくことでスキルが磨かれます。

(3)判断力の向上
限られた時間の中で優先順位を決定するには、どこかで判断をしなければなりません。自ら考えに基づいて、行動に対しての判断を下していくことに慣れることで、意思決定の能力も向上します。

(4)組織への影響力の向上
インバスケット思考を身に付けることで、自らの改善点に気付くだけでなく、部下や組織を有効に活用し、効率的・効果的に組織を運用する能力が身につきます。

 

まとめ

インバスケット研修を受けることで、人によって異なる判断の癖を洗い出し、補強すべきポイントを繰り返しのトレーニングにより強化することができます。
アセスメントに利用するだけでなく、管理職としてのマネジメント力の強化にも是非利用してください。

ビジネスセミナーを探す


経営者層から若手層までを網羅した体系 的なラインアップ。経験豊富な講師によ り、年間1,000本以上開催しています。