講師コラム

「多様化の時代に求められる上司力(ダイバーシティ・マネジメント)」         第2回(全4回)

2017/08/07

前川 孝雄

株式会社Feel Works 代表取締役
株式会社働きがい創造研究所 会長

第2回:「若手部下の理解と支援・育成のポイント」


【1.若手部下を理解する「3つの鍵」】
今回は、「若手部下」を取り上げます。これは新入社員から入社数年目、20代半ばまでの社員を想定して考えます。そして、ここでもまず、上司が若手部下を理解するための「3つの鍵」から見ていきましょう。


(1)「弱い大人免疫力」
今の若手世代は、上司世代に比べて、子供の頃から身近に接する大人の数が減っています。核家族化が進み、親戚やご近所づきあい、地域行事への参加も減っています。学校、部活、塾、そしてSNSでのつながりなど同世代での接触が増える一方で、親や教師以外の大人との関わりは限られます。こうした状態で社会人になるので、会社に入った瞬間に多様な世代と交流し衝撃を受けます。「大人への免疫力」が弱いのです。上司世代の言動が理解できず、会話がうまくできない。注意されたり、叱られると「否定された」と萎縮や反発をしがちです。けれども、ここは育ってきた環境が違うのです。上司側が若手部下の理解に努め、うまく導く工夫が必要です。


(2)「受け身のくれない族」
これは、「弱い免疫力」の延長です。上司が褒めて「くれない」、認めて「くれない」、教えて「くれない」と、「してくれない」ことに不満ばかり持つように感じてしまうのです。「もう社会人なのだから、受け身でなく、もっと主体的に自分から考えて行動しなさい」と言いたいところです。しかし、これも大人・社会側の問題が背景にあると私は見ています。学校でも塾でも、受験も就職活動も、事あるごとに大人が用意し、お膳立てしたエスカレーターに乗せて育ててしまっているからです。社会に出た途端に、「自分で考えなさい」と言われても、容易には適応できません。そこをどう育てていくか、が上司の腕の見せ所なのです。


(3)「チャレンジ精神衰退症」
「まだ若くて、いろいろ可能性があるのだから、もっと伸び伸びチャレンジしてほしい」「若いうちこそ失敗を恐れず、積極的にトライしてほしい」と思っても、どうもそうはいかない。逆に、「はみ出したり、失敗することを避けるようで、消極的だ」…。若手部下について、上司からよく聞かれる言葉です。しかし、これも大人・社会の責任によるところが大きいのではないでしょうか。この国の教育環境では、学校や受験もテストによる減点主義ですし、職場でも長引くデフレ経済の下、失敗することのほうを咎める傾向が強くなるばかりです。若者は時代を映す鏡でもあります。チャレンジして失敗すると評価が下がるのなら、何もしないほうが得策だ、と考えてしまうのです。


【2.若手部下支援・育成の「3つのポイント」】
そこで、以下では「3つ鍵」の背景を踏まえて若手を育てるポイントを押さえていきましょう。<br />


(1)「開口一番の否定語禁止」
人は、初めに「否定されてしまった」と感じると、やる気を失うものです。大人免疫力の弱い若手ならなおさら。「だめだな」「違うな」「できてないな」など、思わず否定語で話していませんか? そこで日頃の挨拶や雑談、仕事上の何気ない会話、ミーティングや会議の時など、若手部下とは笑顔で接し、意識的に肯定語を使うよう心がけてみましょう。部下からの報告・相談も、まずはきちんと受け止めることです。そして、どうしてそう考えるのか、部下の考え方や言い分をよく聞いてみましょう。しかし、それは全てを承認すべきということではありません。「イエス・アンド・バット」方式で、「考え方はとてもいいね。でも、ここはどうかな…」と、良い所を認めながら必要な部分は内省させ、考えさせるのです。「否定されるのは嫌いです」「褒めてくれれば伸びるタイプです」という若手部下には、上司側も「若手免疫力」を鍛えて、上手にコミュニケーションを取る工夫をしてみましょう。


(2)「キャリアの小さな階段づくり」
「褒めてくれない」「教えてくれない」と言わんばかりの若手部下には「困ったもの」と考えがちです。しかし、上司にとっては簡単な仕事であっても、若手には、目の前の見上げるばかりの高さの「仕事の壁」に突き当たり、固まってしまっている可能性があります。そこで、こうした部下には、自分で一段ずつステップアップできる「仕事の小さな階段」を刻んであげることです。「手取り足取り」でもなく「丸投げ」でもない、自力でステップを踏ませて、1~2段登り終えた都度に、小まめにフィードバック(振り返りとアドバイス)をします。そのことで、部下に「自分の力で登ることができた」という達成感を持たせつつ、上司の承認と励ましも与える方法です。最初は時間がかかっても、若手部下は徐々に経験を積み、仕事を覚え成長していきます。


(3)「3割ストレッチの仕事を与える」
いくら「上司が責任を負うから」と励ましても、若手部下に一気に大きなチャレンジを促すのは現実的ではありません。そこで、「小さな階段」と同時に、節目を見て「3割ストレッチ(背伸び)」が必要な仕事を与え、少しずつ増やしていくのです。「今できることだけ」をやっていても、部下の成長にはつながりません。とはいえ、いきなり困難な仕事では折れてしまいます。若手部下にとって適度な難度の仕事の機会を与えることで、徐々に成長と「チャレンジ精神」を引き出していくのです。


(第2回終了)

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