役員研修

役員としての役割理解と必要なスキル・能力を習得する

役員研修とは

役員研修は、一般的には、自社の取締役・執行役員を対象に、役員というポジションに必要な能力を習得するために行われます。

経営の基礎知識や法的責任、リーダーシップ、コミュニケーション力など、一般社員が受ける研修よりも高いレベルでスキルを身につけることを目指します。そのため、必要な知識のインプットに止まることなく、他者との対話や議論を行うことも求められます。

又、多面的な視点で経営環境を分析する力や、人間的な魅力を身に付けるため、リベラルアーツを学ぶ機会を設ける企業もあります。リベラルアーツとは、人文科学、社会科学、自然科学、芸術や数学までを含む広範な学術分野のことです。

加えて、VUCAと呼ばれる現代において、企業が対応すべき社会課題への対応については、経営層・役員がどのような考え・スタンスを持つのかが大きく影響します。SDGs、気候変動、DX、ダイバーシティ&インクルージョンなどについても課題を認識し、どのように対応するかを研修の機会を通じて整理しておくことも重要です。

研修の狙い

  • 役員に求められる役割を認識する
  • ビジョンの実現に向けた戦略的な思考を持ち中長期で事業を考える
  • 経営課題を常に考え、広い視野で全体最適を考える

プログラム

※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00です。
 財務・会計が苦手な役員向けに追加プログラムもご用意できます。

1.取締役・執行役員としての意識の醸成~役割と重点実務~

(1)トップが求める取締役の役割とは
(2)外部環境と国策を理解し、チャンスを見出す
(3)自社の強みを活かす戦略立案を考える
(4)戦略を実行管理する仕組みを構築する
(5)自らを律して部下の成長支援に力を貸す
(6)経営者への提言

2.取締役・執行役員の責任とコンプライアンス・法律知識~

第1部:総論
(1)取締役の法的責任を考えるための背景事情
(2)取締役の法的地位について
(3)取締役のリーガルリスクをどう考えるか

第2部:各論
(1)取締役は誰のために仕事をするのか
   1)「善管注意義務」を具体的な事例から理解する
   2)「内部統制の構築」を具体的な事例から理解する
   3)「重過失」と「過失」の違いを理解する
(2)ステイクホルダーへの配慮(コンプライアンス経営)
(3)取締役の権利・義務と「共助の精神」
   代表取締役・監査役(監査役会)・会計監査人との関係
(4)労務管理とハラスメント

3.リーダーシップと戦略の実行

(1)経営戦略の基本
(2)上司と部下、リーダーとフォロワー
(3)物語マトリクス理論
(4)両利きの経営

4.まとめ

取締役と執行役員の違い

企業によっては、取締役と執行役員を一度に研修するケースも
ありますので、両者の違いについて整理しておきます。

(1)「取締役」(役員)

取締役とは、会社の業務執行に関する意思決定を行う役員のことをいいます。取締役は、会社法によって定められている役員であり、株式会社では必ず設置しなければならない機関のひとつです。会社法上の役員とは、株主総会で選任された「取締役」「監査役」「会計参与」を指します。

取締役と従業員の違いは、役割の他に会社との契約形態が挙げられます。役員は株主総会の決議を経て選任され、会社からの委任を受けて就任します。

従って、取締役と会社との関係は委任契約関係です。そのため、取締役は会社に対して善良なる管理者に期待されるべき注意義務を負い、法令、定款、総会決議を守り、職務を忠実に遂行する義務も負います。又、会社との競業に関する規制や利益が相反する取引に関する規制もあります。これらの義務に反して会社に損害を与えた場合は損害賠償責任を負う可能性があります。

 

(2)「執行役員」(従業員)
 

執行役員とは、取締役が決定した方針に基づき、会社の業務を行うために設けられた役職であり、会社法上の役員ではありません。執行役員は、取締役に業務が集中してしまい迅速な業務執行に関する意思決定ができないという事態を回避する等のために設置されます。

執行役員という役職を設けるかどうかは各企業の裁量に委ねられています。執行役員は、役員という名称ですが、取締役などの役員とは異なり、会社との間で雇用契約を締結している従業員であることが多いです。取締役と執行役員とは、会社に雇われているか否かという点で大きな違いがあります。
執行役員を設置せず、取締役だけの場合は、取締役が会社の重要事項を決定し、同時に事業運営にも責任を持つことが一般的です。


役員研修を行うメリット

(1)経営に必要な資質を高める

役員には経営に必要とされる、確固とした事業観、経営に関わる視座・識見、経営を進める実行力など様々な資質が求めれます。これらの資質を身につけてもらうことが、役員研修の一番の目的と言えます。


(2)役員同士の連携強化

役員は、自身に任された業務に忙しく、他の役員とのコミュニケーションが不足しがちです。又、近年では、社外から役員を招へいするケースも増えており、役員研修を通じて、異なる背景を持つ役員同士の連携と協力が促進され、業務での横連携の促進や全社一丸となった経営などに効果が期待できます。


(3)業績を高める

役員は、各部門の責任者であることが多いことから、事業運営に大きな影響を与える存在と言えます。研修で各自のスキルを高めれば、業界の変化をリアルタイムに見通して的確な判断ができるようになり、的確な対応を行うことで、会社の業績を高めることが出来るようになります。


役員に必要なスキル・能力とは

トップマネジメント層である役員とミドルマネジメント層である部長・課長では求められるスキル・能力が異なります。このような考え方を示したものに、カッツ理論(カッツ・モデル)が有名ですので、ご紹介しておきます。

カッツ理論(カッツ・モデル)
「カッツ理論(カッツ・モデル)」とは、1950年代に、米国ハーバード大学 教授のロバート・カッツ氏が提唱したマネジメントの各層ごとに求められるビジネススキルが変わることを説明した理論のことです。

カッツ教授は
①マネジメント層を、次の3つの階層に分けて考えています。


「ローワーマネジメント」
係長、プロジェクトリーダーなど、業務の現場で指示された業務をメンバーを率いて、確実に実行することを求められる立場です。

「ミドルマネジメント」
部長や課長といったいわゆる管理職層です。決定された経営方針や戦略を理解し、下の階層に伝え、業務が円滑に進進めていく立場です。

「トップマネジメント」
いわゆる経営層です。経営方針や戦略の決定に関わる立場になるため、企業全体の業績に対し責任を持つこととなります。又、現場で具体的な指示を与えること余りありません。

②マネジメントに必要なスキルとして、次の3つを挙げています。


「テクニカルスキル」
担当業務に必要な知識や技術です。経理、会計、財務部門の担当者であれば経理や財務の知識が該当します。又、業務遂行能力や業務知識と呼ばれるものです。

「ヒューマンスキル」
他者との良好な人間関係を構築し、円滑なコミュニケーションを行うためのスキルです。
他者には、社内の人間はもちろんですが、社外やパートナー企業の人間やお客様との関係も
含まれます。


「コンセプチュアルスキル」
企業を総合的にとらえるスキルです。企業の組織の一つに変化があった場合、相互に関連する他の組織にどのような影響が出るか、又、国全体の政治的、社会的、経済的変化が、企業にどのような影響を与えるか予想するために、物事を抽象化して本質を見極めるスキルであると言えます。

簡単にイメージでお伝えすると、「ある出来事から多くの学びを得て、変化の方向性を感じられる人」「全く違うことに見える出来事に共通項を見つけ出し真の姿を想定できる人」ということになります。

カッツ教授は、マネジメント層の各層において必要な3つの能力の割合が変わることを主張しており、特に役員には、コンセプチュアルスキルの比重が高くなります。

コンセプチュアルスキルの具体例

カッツ教授は、コンセプチュアルスキルの具体的な内容については示していませんが、次の要素が該当すると考えられます。
① 思考力
・「ロジカルシンキング」   :論理的思考
・「ラテラルシンキング」   :水平思考
・「クリティカルシンキング」 :批判的思考

② 変革性
・「知的好奇心」       :新しいものを取り入れていく
・「チャレンジ精神」     :リスクを恐れない精神
・「先見性」         :先を見通す力
・「戦略的思考」       :内外環境分析を踏まえて、戦略的思考を展開する

③ 問題解決力
・「問題解決思考」      :問題の真因を特定して、解決する能力
・「多面的視野」       :様々な角度から物事を見る

④ 組織貢献力
・「俯瞰力」         :組織全体を俯瞰し、全体最適を考える
・「受容性」         :状況や相手を理解し受け入れる
・「柔軟性」         :過去にとらわれず臨機応変に対応できる


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