女性活躍推進研修(管理職編)
目次
- 女性活躍推進とは
- 研修の狙い
- プログラム
- 女性活躍推進の必要性
- 管理職が女性社員を育成することの必要性
- 男性管理職の女性部下育成に対する意識
- 管理職の女性部下育成への影響
- 管理職の女性部下育成に必要な姿勢
- 管理職が気を付けたいアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)と配慮
- ワークライフバランスを実現できる職場づくりの推進
- まとめ
管理職として女性の部下との接し方の基本(セオリー)を学ぶ
女性活躍推進とは
ここで言う女性活躍推進とは、「女性の職業生活における活躍」を推進する取組のことです。また、「女性の職業生活における活躍」は、女性活躍推進法(『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律』の略称)において、『自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分発揮して職業生活において活躍すること』と記されています。
研修の狙い
- 女性が活躍できる組織を作ることの重要性を理解する
- 女性活躍推進における管理職の役割を学ぶ
- 活躍する女性社員を育成するための具体策を学ぶ
プログラム
※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00です。
1.なぜ女性の活躍が必要なのか
(1)多様性のある組織のメリット・デメリット【ディスカッション】
(2)多様性を今後生かしていくために
2.働く女性を取り巻く課題を理解する
(1)女性視点で考える【ディスカッション】
(2)ロールモデルとなる女性がいない
(3)長期的なキャリアビジョンを描けない
(4)ワーク・ライフ・バランスができるか不安
3.女性社員へのマネジメントのポイント
(1)コミュニケーションを密に取る
(2)仕事の目的、意義、目標を共有する
(3)ワークライフバランスを理解する
(4)フィードバックすることを忘れない
(5)「女性部下の気持ち」を理解する
①気持ちを分かってほしい
②認めてほしい
③任せてほしい
4.やる気を低下させるマネジメント
(1)上司のコミュニケーション不足
(2)女性の働く意欲を低下させる言葉
(3)気づかない、勘違いしているマネジメント
5.こんな時どうする?【ケーススタディ】
(1)朝から声を掛けづらい雰囲気の女性社員
(2)仕事とプライベートを割り切っている女性社員
(3)仕事に対する責任感が無い女性社員
6.まとめ
女性活躍推進の必要性
日本においては少子高齢化の進展により2011年以降、人口減少社会に突入しており、その結果、労働力人口が今後大幅に減少していくことが見込まれています。
これにより企業においては「人手不足」の問題が深刻化し、事業継続への支障も生じかねません。このため、人材活用のすそ野を広げ、より多様な人材の能力を活かしていくことが大きな経営課題となるため、女性の活躍推進は企業にとって喫緊の課題となっています。
管理職が女性社員を育成することの必要性
従来、企業における女性活躍推進は出産・育児を経た後の定着支援が中心でしたが、今後は仕事において活躍をしてもらう段階に移行していると言えます。
2022年4月1日から、女性活躍推進法の改正により「常時雇用する労働者数が101人以上の事業主」に、「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出」および「女性活躍推進に関する情報公表」が義務付けられました。
このことから、女性活躍推進は中小企業にとっても、重要な経営課題であることが分かります。
また政府は、東京証券取引所ではプライム市場の上場企業を対象に女性役員比率に係る数値目標として、2025年を目途に女性役員を1名以上選任するよう努めることや2030年までに女性役員の比率を30%以上とすることを目指すよう求めています。
このように企業にとって女性活躍推進は必ず行わなければいけないものであり、そのために社員の能力開発・育成の中核的存在である管理職の責任は大きいと言えます。
それでは女性社員がモチベーション高く、能力形成し、昇進意欲を持って、働き続けてもらうために管理職はどのように女性社員をマネジメントすればいいのでしょうか。
男性管理職の女性部下育成に対する意識
管理職に行われたアンケート調査(21世紀職業財団「若手女性社員の育成とマネジメントに関する調査研究」2015年)によると、「女性の幸せは仕事より結婚や出産にあると思う」と回答した男性管理職が約3割おり、性別役割分担意識は根強くあるものと考えられます。
また、男性管理職では「女性部下よりも男性部下に、困難な仕事を与えている」と回答した人、「責任の重い仕事を与えている」と回答した人、「より多くの仕事を与えている」と回答した人がそれぞれ3割強おり、男性管理職の仕事の付与に男女差があると回答しています。
また、3割強の管理職が「男性部下の方がコミュニケーションを取りやすい」と回答しています。
一方、別のアンケート調査((株)日本総合研究所「女性の活躍推進に関する男性管理職の意識調査」2016年)では、女性部下との仕事をやりづらいと感じた理由として、「セクハラやパワハラへの必要以上の配慮」を6割弱の男性管理職が挙げています。
管理職の女性部下育成への影響
では、女性社員は、管理職から受ける影響をどのように感じているのでしょうか。
21世紀職業財団の行った調査(「男女正社員対象 ダイバーシティ&インクルージョン推進状況調査」2022年に)によると、女性部下から見て管理職が「自分の育成に熱心である」、「コミュニケーションがよくとれている」、「仕事に対して、建設的なフィードバックをしてくれる」「少し高い目標や経験値より少し困難な仕事を任せてチャレンジさせている」場合、昇進意欲やモーチベ―ションの向上につながるとされています。
その一方で第1子妊娠前、職場復帰後2~3年、現在について、女性社員に上司のマネジメントについてそれぞれ尋ねたところ、「上司は、あなたの育成に熱心である」「上司とあなたのコミュニケーションはよくとれている」「上司は、あなたの仕事に対して、建設的なフィードバックをしてくれる」と答えた割合は、妊娠前よりも職場復帰後に下がり、そして現在も元に戻っていないとする調査結果となりました。(21世紀職業財団「育児をしながら働く女性の昇進意欲やモチベーションに関する調査」2013年)。
管理職の女性部下育成に必要な姿勢
このため、管理職の「女性の幸せは仕事よりも結婚や出産にあるので、早期に退職する。」「仕事よりも家庭を優先させるので、難しい仕事は任せらない」という性別役割分担意識をもたずに、女性社員とはコミュニケーションを積極的にとり、業務経験を積ませ、一皮むける経験ができるような仕事を与える姿勢が女性社員の就労意欲を高めることから、能力開発を推進することが必要なことが分かります。次に性別役割分担意識がどのように生じるか解説します。
管理職が気を付けたいアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)と配慮
アンコンシャスバイアスとは、自分自身では気付いていない、「ものの見方や捉え方の歪みや偏り」を意味します。経験を通して本人が気付かないうちに身に付けたものであり、人の行動や意思を決定する際に影響を与えます。
古い習慣や過去の常識にとらわれたアンコンシャスバイアスは、無意識であるがゆえに修正が難しく、社会の変化や職場の多様性が増す中では、管理職として求められている価値観や判断軸にズレを生じさせることにもつながるのです。
例えば「女性の幸せは仕事より結婚や出産にあると思う」という性別役割分担意識や育児復帰をした女性部下は「『子どもが小さいうちは子ども優先で、仕事は頑張らずに出張などもしたくない』と思っている」という思い込みなどがあります。
また、管理職が、産休・育児休業から復帰した女性社員に「子どもの病気の時などに休みやすいように」と休み前とは著しく異なる難易度の低い業務に配置転換するのは、女性社員自身が望んでいるとは必ずしも限りませんので、管理職本人の「配慮の勘違い」により、女性社員の望まない配置転換を行っている可能性もあります。
この出産した女性が職場復帰した際、自分の意志とは異なり担当業務や部署などを変更されてしまい、結果として出世コースから外れてキャリアアップの機会を失うことを「マミートラック」と言い、女性社員のモチベーションを大きく阻害し、場合によっては離職につながると言われています。
無意識の偏見からもくる「配慮」は「ベネヴォレント・セクシズム」と言います。「ベネヴォレント」は「親切な」「善意のある」「慈悲深い」といった意味であり、「セクシズム」は「性差別」を指します。
この概念の背景には「女性はか弱いため、男性から守られなければならない」という考えがあります。「女性に転勤はさせられない」「女性は顧客からのハードクレームの担当を外す」などがその一例です。
このような配慮は「女性は男性より劣った存在」という前提にたっており、女性の能力開発の機会を奪う可能性にもつながります。
では、管理職はどうやってアンコンシャスバイアスに対処すればいいのでしょうか。それは女性社員とよくコミュニケーションをとり本人の意思を確認することです。
会話の中で自身の発言に対する女性社員の反応に注意を払い、違和感を感じたら質問を行って一人ひとりのものの見方や捉え方が異なるということを、常に意識することが大切です。
ワークライフバランスを実現できる職場づくりの推進
女性社員が管理職への昇格を躊躇する理由の1つに長時間労働への不安があります。現在も家事・育児の負担は女性に大きく偏っており、女性社員は現実的に長時間労働が困難な状況にあると言えます。
また、若い男性社員は家事・育児等への参画意欲や育児休業取得意欲も上の世代と比較して高く、仕事時間を減らしたいと考える傾向が強いことがわかっています。
このことからワークライフバランスが実現できる職場をつくることは女性活躍推進にとどまらず、若手男性社員のモチベーションアップにもつながると言えます。
管理職は職場での業務量を調整して長時間労働を是正することが求められています。
まとめ
管理職に求められる女性活躍推進を行う上での女性部下育成の重要ポイント
1) 女性社員には困難なものも含めて業務経験を多く与え、仕事での成功体験を積ませる。一人一人と向き合って業務に対する期待を伝える。
2) 自分の無意識の偏見が女性社員の能力開発を阻害していることを理解し、払拭するために女性社員一人一人とよく話をする
3) 女性だけでなく男性も含めすべての社員が働きやすいワークライフバランスのとれた職場環境をつくる。