接遇研修の目的と実施のポイント
お客さまに感動をもたらす「おもてなし」の気持ちを添えた接遇を身に付ける
研修の狙い
- お客さま期待と自社の商品・サービスがどのような価値を提供しているのか把握する
- 接客と接遇の違い、「目配り」「気配り」「心配り」の違いを理解する
- 顧客満足・顧客感動のためにマインドセットを行う
プログラム
※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00です。
1.オリエンテーション
2.理想の接遇とは
(1)お客さまの期待値を超えるパフォーマンスの提供
(2)自分がうれしかった接遇経験【グループワーク】
(3)感動を覚える接遇とは
「サプライズ」「プロの技」「心づかい」で分類
(4)接客と接遇の違い
3.接遇をする前に必要なマインドの作り方
(1)お客さまとの信頼関係を築く
(2)ラポールとは
4.基本接客スキルとおもてなし接客スキル
(1)基本接客の振り返りとおさえるべきポイント
「挨拶」「表情・笑顔」「身だしなみ」「言葉遣い」「立ち居振る舞い」
(2)接遇力を高める3つのポイント
「目配り(観察力)」「気配り(思考力)」「心配り(行動力)」
(3)お客様の心を掴む「感動」を届けるスキル
5.シミュレーショントレーニング
(1)ロールプレイングの効果と実施方法
(2)ファーストアプローチ【ロープレ練習】
(3)お客様から信頼を得る接客練習【ロープレ練習】
6.おもてなしの心とスキルを高める仕組みについて
7.まとめ
・明日からの実践計画の作成【個人ワーク】
接遇とは
「接遇」とよく似た言葉に「接客」がありますが、「接客」はお客さまが不快な気持ちにならないよう、最低限のマナーをもってサービスを提供することを意味します。
一方「接遇」とは、「接客」にプラスアルファの「おもてなし精神」を加え、お客さま一人ひとりに合わせたサービスを提供することです。つまり、「接客」は「接遇」という大きな輪の中の一部分であるといえます。
「接遇」の最も重要なポイントである「おもてなし精神」とは、お客さまに接する心のありようのことであり、その場にお客さまがいるいないにかかわらず、快適な空間を準備し、お越しをお待ちする心までもが含まれています。
目の前のお客さまのご要望に失礼なく対応していく「型」が接客であるならば、「接遇」には、ただご要望に対応するだけでなく、そのお客さまのために何ができるのかを、もてなす気持ちを持って考えて接することで、「型にとらわれず」お客さまとの出会いやその瞬間においてお客さまの五感と心に感動を与えることが求められています。
所作、笑顔、言葉遣いなどのマナーは、「接客」における基本的な「型」として当然クリアしている前提で、おもてなしをプラスすることで、お客さまに感動を与え、「あなたから買いたい」「またここに来たい」と思っていただけることが重要です。
「接遇」と聞くと、飲食業や旅館業に携わる方が思い浮かぶかもしれませんが、実際には、医療、教育、福祉、行政など非常に多くの分野で役に立つ概念です。
接遇研修が重要視される理由
接遇研修が重要視される理由は、大きくは次の2点です。
(1)顧客満足から顧客感動へ
企業が安定的に成長するためには、お客さまが継続的に商品やサービスを利用していただくことが必要です。そのためには、自社の商品やサービスによって顧客が抱える不満や不便を解消し、満足していただかなければなりません。
そうした考えから、1980年頃から「顧客満足」(CS=カスタマーサティスファクション)という言葉が広まり、売上や購買金額といった数値情報だけでなく、「顧客が商品に満足したか」という尺度を重視する企業が増えました。
その結果、お客様アンケートや顧客満足度調査が普及し、顧客の満足度を測る一般的な方法として多くの企業で実施されています。
多くの企業が「商品に対する満足度」の向上に注力している状況下では、競合と差別化するためには、期待通りの商品・サービスを提供するだけでなく、顧客に想像以上の感動を体験してもらうための「顧客感動」(CD=カスタマーディライト)の施策が重要とされるようになりました。
(2)顧客感動が求められているため
アメリカの経営学者でありマーケティング論の大家である、フィリップ・コトラー博士は「顧客感動」と「顧客満足」との違いについて、顧客の持つ商品やサービスによって、顧客は自分が抱える不満や不便を解消できるという期待と実際のパフォーマンスとの大小関係を用いて、以下のように説明しています。
<期待とパフォーマンスの関係>
期待>パフォーマンス:不満
期待=パフォーマンス:満足
期待<パフォーマンス:感動
その商品やサービスのパフォーマンスが期待どおりであれば、満足を覚えます。パフォーマンスが期待以下であれば、不満を感じます。そして、パフォーマンスが期待を上回ると、そこに感動するのです。
「顧客感動」は、企業に良い循環をもたらすことを期待できます。顧客が期待以上のサービスを受けて感動することで、企業や製品への愛着や信頼が高まります。
このように、特定の企業やブランドに愛着や信頼、親しみを感じることを「顧客ロイヤルティ」や「ブランドロイヤルティ」と呼びます。ロイヤルティは英語の「Loyalty」で、もともとは忠誠心を表す言葉です。
顧客ロイヤルティやブランドロイヤルティが向上することで、顧客はリピーターとなり、継続的に商品やサービスの利用していただけるようになります。
さらに、顧客ロイヤルティの高いロイヤルカスタマーが増えることで、高評価の口コミや評判の獲得を期待できます。これらは、新規顧客の獲得にも寄与することでしょう。
接遇研修の目的・メリット
接遇の向上により得られる目的とメリットをいくつかご紹介しておきます。
(1)顧客ロイヤルティとブランドイメージの向上
接遇に対する意識が高まることで、お客さまへの応対方法を工夫するようになり、お客様満足度の向上につながり、リピート客の増加を見込めます。
リピート客の増加は、SNSでの良い書き込みに繋がり、企業としてのブランドイメージや、信頼度が向上や競合他社との差別化が図れます。
(2)クレーム抑止効果
一般的に、クレームは、商品やサービスに対するお客さまの一定の期待水準を大きく下回った時に発生します。つまり、お客さまが商品やサービスで「不満」を強く感じたからこそ、クレームを仰っていることを忘れてはいけません。
接遇スキルが向上すると、言葉遣いや態度、表情だけでなく、従業員がお客さまの立場に立つ共感の意識が芽生え、クレームを発するお客さまの「不満の理由」をよく聴くようになることから、お客さまに寄り添う対応ができるようになり、大きなクレームに発展することを防いでくれます。
(3)従業員のモチベーションアップ効果
接遇に対する意識が高まり、お客さまに接するスタッフ一人ひとりが、心から「お客さまを喜ばせたい」と思うことが、お客さまが「満足」ひいては「感動」するほどのサービスを提供するための第一歩なのです。
お客さまの得た感動は、スタッフ自身に感謝として返ってくることで、スタッフ自身が「仕事が楽しい、やりがいがある」という実感を膨らませることになり、お客さまとスタッフの間で好循環が始まります。
(4)社内外での良好な関係を築ける
接遇の対象に、お客さまだけではなく、同僚・部下・上司・取引先を含めることが出来れば、接遇に重きを置いた社風となり、社員にとっては安心して働ける会社であり、取引先にとっては信頼して取引できる会社となり、社内外の評価が上がるはずです。
接遇研修のポイント
接遇研修を行う場合に、組み入れておきたい顧客感動を実現させるためのポイントをご説明します。
〇お客さま一人ひとりに合わせて対応する
〇接遇マインドを高める
〇感謝を伝え合う仕組みを作る
これらのポイントをクリアすることができれば、顧客満足を上回り感動させることが可能です。どれも重要なことなので、1つ1つ見ていきましょう。
(1)お客さま一人ひとりに合わせて対応する
顧客感動を実現させるために顧客の期待値を超える接遇を提供しなければなりません。
一期一会(生涯に一回しかないと考えて、そのことに専念する意)という言葉がありますが、たとえば、3ヶ月前にある飲食店に来店した女性のお客さまが、再びお越しいただいた時に妊娠されていて、少しお腹が大きくなっているような場合、どういったサービスの工夫が考えられるでしょうか。
〇料理にアルコールが入っている場合は抜く
〇ゆったり座ることのできる席を用意し、ひざ掛けを準備する
〇飲み物は、ノンカフェインやノンアルコールのものをお勧めする
というようなことが考えられます。
さらに来店時、体調を気にする言葉掛けや妊娠を祝う声掛けをすると、「覚えてくれている」という喜びと特別感を感じるでしょう。
リピートいただけるお客さまでも、その時々で一期一会です。その時にできる最高のサービスを目指したいものです。
(2)接遇マインドを高める
お客さまに感動を与えるには、お客さまのことを一番に考え、もてなす気持ちを持つことが大切になります。
「おもてなし」の基本は、以下の3つです。
〇目配り
〇気配り
〇心配り
それでは、それぞれについて、見ていきましょう。
①細かなところまで気づく「目配り」
目配りとは、「いろいろなところに、注意を行き届かせること」です。そのためには、広い視野を持って、細かい点まで気づくことが必要です。
レストランでメニューから顔を上げると、スタッフの人がすぐに来てくれると嬉しいものです。目配りができる人は、常に顔を上げて周りを注意深く見ています。だから、誰よりも真っ先に気づくことができるのです。
何気なく見ていると見落としてしまう、お客さまの些細な行動や変化にもいち早く気づくことが、「顧客感動」には必要です。
②少し先を考える「気配り」
「気配り」は、相手が困っていることがないか相手の立場で次に何が必要かに気をつかうことです。さらに言えば、ほんの少し先の未来を想像した行動をとることまでもが気配りと言えます。
たとえば、コーヒーが出てきたら、シュガーポットを取りやすいように出してあげる。このように、相手が次にどのような行動をするのかを察知し、行動することが気配りです。
まずは、「自分だったら次にどのような行動をするかな?」と考え、それを行動に移すことが、気配り上手の第一歩になります。
③感動を与える「心配り」
「心配り」と「気配り」はよく似ていますが、「気配り」は、相手の立場で次に何が必要かを想像して行動しますが、「心配り」は、相手を思い、何をしてあげたら喜ぶのかなど、相手の心に寄り添い行動することです。つまり「気配り」よりも、さらに相手のことを思って行動することです。
例えば、職場を例にすると
メンバーの様子が、いつもと違うと気づくのが「目配り」
忙しそうであれば、手助けしてあげることが「気配り」
相手の立場になって苦しみや喜びを分かち合えるようになるのが「心配り」です。
(3)感謝を伝え合う仕組みを作る
誰しも感謝されると嬉しく感じるものです。特に、接遇は、お客さまからの報酬を求めて行うものではありませんから、お客さまからの感謝だけでなく働く人同士でも感謝の気持ちを伝え合うことで、モチベーションを高める必要があります。
実際に、感謝の気持ちをカードに書いて相手に渡す「サンクスカード」を導入している企業もあります。
ちょっとしたことでも感謝の気持ちを伝え合えることで、コミュニケーションの活性化ややる気のアップにも繋がります。