講師コラム

「多様化の時代に求められる上司力(ダイバーシティ・マネジメント)」
第3回(全4回)

2017/08/14

前川 孝雄

株式会社Feel Works 代表取締役
株式会社働きがい創造研究所 会長

第3回:「「シニアの年上部下」の理解と活躍支援のポイント」


【1.シニアの年上部下への「3つの誤解」】
シリーズ3回目は「シニアの年上部下」を取り上げます。60歳以上の雇用延長が義務づけられ多くの企業・職場で中高年社員の比率が増すなかで、「年下上司×年上部下」の関係は避けて通れないテーマになってきています。特にシニア世代(50~60代)をマネージすることは、難しく悩ましい課題です。それでは今回も、上司がシニアの年上部下を理解する「3つの鍵」から見ていきましょう。


(1)「昔取った杵柄絶対主義」
年上部下が「自分の実力はまだまだ落ちていない。昔の経験は今も立派に通用する」とばかりに、「過去の考え方とやり方で凝り固まっている」という見方です。確かにシニア層にはその傾向が見られがちかもしれません。しかし、人は誰でも何十年と「その道一本」で勤めてくると、自分なりの仕事の「型」が出来上がってきます。さらに、過去の「成功体験」が強いほど、まずはそのやり方で頑張ろう、何とか成果を出そうと考えるのは自然で、むしろ「やる気」の表れともいえます。あるいは、本人も新しい仕事や役割に戸惑い、悩みつつも他に方法が見つからず、やむなく過去の経験に頼っている場合もあります。


(2)「消化試合型仕事姿勢」
年上部下に、新たに力を発揮してもらおうとしても、「今さら努力やステップアップなんて」とばかりに、前向きに動いてくれない。そこで上司側も、「どうせ定年まであと〇年だから、本人もそっとしておいてほしいだろう」と遠慮する。そして年長者は除外して、他のメンバーで仕事を回そうとする。…ありがちな構図です。しかし、実は、年上部下本人は、なかなか自分の活躍場所や居場所が見いだせず、あきらめたり、迷惑を恐れて必要以上に遠慮している場合もあります。また、若手・中堅の部下からすれば「皆忙しいのに、あの人ばかり楽をしても、何も言われない」と、不満が貯まる場合もあるのです。


(3)「気遣い過ぎコミュニケーション」
「年上だからと気を遣い過ぎ。もう少し気軽に話や意見を出してくれれば…」と感じることもあるでしょう。しかし、年上部下でも管理職経験者の場合など、「部下の立場でこんなことを言うと、上司もやりにくいのでは」と、敢えて遠慮していることもあります。確かに「気遣い過ぎ」とも言えますが、時に上司より経験豊富で視野が広いが故に「妥当な気遣い」の場合もあります。そこを踏まえずに、表層的なコミュニケーションだけになることで、時に「劇場型」のメンツ対決や対立になってしまうと良い結果になりません。


【2.シニアの年上部下 活躍支援の「3つのポイント」】
それでは、以上「3つの鍵」を踏まえて、シニアの年上部下の活躍支援に向かうポイントを押さえましょう。


(1)「強みや持ち味に応じた新たな役割・目標を定める」
「昔取った杵柄」を捨て去るのは、難しいものです。また、「全て忘れて一から出直せ」と言われると、今までの自分を全否定されたようで、反発や自信喪失にもつながります。そこで、本人が仕事で培ってきた強みや、持ち味を探し、それらを上手く活かした新しい役割や目標を担ってもらいましょう。本人の社内経歴を振り返ったり、面談などで直接本人に聞くのもよいでしょう。「この部分はぜひ仕事に活かし、後輩へのアドバイスもお願いします」と依頼します。但し一方、ビジネス環境の変化や、相互の立場の理解も不可欠です。捨ててほしい拘りや、守ってほしい役割範囲やルールは明確に伝えましょう。


(2)「組織貢献への意欲を引き出す」
「消化試合」のパターンを抜け出すには、年上部下に組織貢献への意欲と見通しを掴み直してもらうことが大切で、(1)とも重なるところです。現役時代の終盤で、本人がこれまでの自分の知見を「棚卸し」して、あるいは今まで果たせず温めていた希望の仕事を成就して、後輩と組織のために「よい置き土産」を創ってもらうのです。また、こうした「棚卸し」や「仕事の総仕上げ」は、本人の退職後の人生プランや「生きがい」に役立つ場合が多いものです。いまや人生100年時代。定年退職後には現役時代並みの自由時間が待っています。こうした視点から、会社員の最終コーナーでの「やりがい」「働きがい」を共に見出し、創っていくことが望まれます。


(3)「尊重を示し、先人の知恵に学ぶ姿勢」
年上部下との良好な関係づくりの秘訣は、まず「人生・職場の先人」として尊重し、日頃からその姿勢を本人にも周囲にも示すことです。これは、年長者としてのプライドを尊重する大事な部分です。そして、時には、年上部下と一対一で、人生や仕事上の意見やアドバイスをもらう機会をつくることも有効です。「あなただからこそ」と頼りにされていると感じれば、年上部下も上司を支持・支援しようと力を貸してくれます。「上司・部下」は上下関係ではなく組織上の役割分担であり、故に、時にはあなたから年上部下への指示や依頼が必要なことも、きちんと納得してもらいましょう。


(第3回終了)

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