講師コラム

「多様化の時代に求められる上司力(ダイバーシティ・マネジメント)」
第1回(全4回)

2017/07/31

前川 孝雄

株式会社Feel Works 代表取締役
株式会社働きがい創造研究所 会長

■本コラムでは、4回シリーズで、社員の多様化(ダイバーシティ)が進むなかで、様々な部下をいかに理解し、効果的な支援・育成を行うか、そして「上司力」をどう発揮していくか、そのポイントをお伝えします。


第1回:「女性部下の理解と支援・育成のポイント」


【1.女性部下を理解する「3つの鍵」】
女性部下の支援・育成を考える場合に、上司(管理職)が女性部下を理解するための「3つの鍵」を、見てみましょう。但し、これは決して女性部下をステレオタイプ化して見るためのものではなく、上司(特に男性上司)が持ちやすい「誤解」に気づき、部下支援・育成に活かすためのもの、と心得てください。


(1)「キャリアについての短期的な強い締め切り意識」
女性部下との面談などで「あなたには3年後、5年後にこうなってほしい」と期待を伝えても、「今年なら考えられますが、そんな先のことは、わかりません」と言われてしまう場合があります。実は、本人は「その頃には結婚して子育て中かもしれない」、あるいは「夫が転勤したら…」と悩みます。つまり、本人にとっては、想定されるライフイベントで仕事や生活が大きく変化する可能性があり、中長期のキャリアの見通しを問われても、明確に答えにくいのです。上司とすれば、キャリアの形成について短期的な「締め切り意識ばかり強い」と感じますが、女性部下の立場や気持ちを考えれば無理もありません。


(2)「変化を怖がる(嫌がる)保守意識」
上司側は、期待故に「ステップアップしてリーダー役を担ってほしい」とか「配置転換で新しい仕事にチャレンジし、成長してほしい」と考えますが、女性部下はこれを拒みがちな傾向があります。上司からすれば、本人を思っての提案を拒否され、「仕事に対して意欲がない」「保守的だ」と思うでしょう。しかし、会社の仕組みはまだまだ旧来の「男性中心型」です。改善されつつあるとはいえ長時間労働・体力勝負の職場文化や、コミュニケーションや意思決定でもマイノリティである女性(リーダー)の立場など、様々な「やりにくさ」を考えると、簡単にチャレンジしようと思えないのです。


(3)「カメレオン型仕事観」
つい半年や1年前までは「仕事が楽しく、がんばります」「ステップアップします」と語っていたものが、突然「仕事のペースを抑えたい」とか「負荷の軽い仕事に換えてほしい」など、本人の希望がコロコロと変わるように感じてしまうことです。まるで「カメレオン」のようでとらえようがない、「気まぐれなのか」と考えてしまう、というわけです。しかし、実は、育児・子育てや、家族の健康問題や介護など、急な家庭・家族の変化が、女性部下への負荷となってきている場合があり、なかなか上司や同僚には相談しにくいこともあるのです。


【2.女性部下支援・育成の「3つのポイント」】
既にお気づきかもしれませんが、以上3つの「鍵」の背景は、上司が女性部下本人としっかりコミュニケーションをとることで理解できるものですし、現状と今後の方向性を共有できれば、壁も打開できるものです。また一方で、最近、「ことさらに、女性、女性と特別視すること自体がどうなのか」との声も聴きますが、まだまだ女性が働き続けるための職場内外の環境には課題が多いという前提もしっかり認識しておく必要があります。そのうえで、女性部下支援・育成の3つのポイントを押さえておきます。


(1)アドバイスより、まず共感 ~傾聴型コミュニケーションを心がける
上司は自分が働いてきた環境による固定観念が育まれており、つい思い込みがちなものです。そこで、まず部下の状況や思いに耳を傾け、よく聴くことが大事です。特に「問題解決型コミュニケーション」に慣れた男性上司は、すぐアドバイスや解決策を示しがちです。しかし、部下にとっては、上司が自分の考えや悩みを親身に聞いてくれ、同じ気持ちで考えてくれることが何より大事な場合があります。傾聴の方法としては、「〇〇さんは〇〇に悩んでいたんだね」と、相手の話のポイントを繰り返し「共感」を示すことも有効です。人は自分の心情を吐露することで、自分が避けてきた課題と向き合い、自ら解決に動く力も働きます。


(2)仕事の目的・目標を共有し、やり方は任せる
上司が、部下の直面する課題や悩みを理解せず、将来の夢ばかり語る「ロマン型上司」だと、女性部下に対する誤解も生じがちです。しかし一方、目前の「作業」を目的も語らず指示するだけの「指示だけ型上司」も、部下のやる気を失わせます。そこで、仕事の目的・目標を部下と共有しながら、やり方は任せ応援する「意味づけ型上司」が望まれます。特に、時間制約のある子育てや介護中などの部下の場合、仕事の意義を上司としっかり共有しつつ、その方法や時間に裁量幅があれば「働きがい」と「働きやすさ」も両立します。これは時間より成果で仕事を評価する「働き方改革」の方向にも合致します。


(3)個を尊重し、「あなただからこそ」の仕事を任せる
以上を前提としながら、「この仕事は、あなただからこそ任せたい」という、上司の部下への期待や意味づけの明確化も大切です。人は、「あなたの持ち味や、強みがあってこそ」と承認され評価されることで、やる気が高まります。特に、男性上司の場合、セクハラやパワハラと見なされることを恐れて、女性部下と距離を置き、遠慮しがちな場合がみられます。もちろん、ハラスメントには十分注意しつつも、女性部下とも正面から向き合い、個として尊重することは大切です。感性豊かな部下ほど、上司からの誠意ある期待には敏感に応えてくれるものです。


(第1回終了)

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